事務局より海外の脱炭素・環境に関する動向を会員向けにお届けします。

●ベトナム：国内カーボンクレジット取引市場の準備着々と

ベトナムで独自のカーボンクレジット取引市場を構築する動きが見られる。
2020年11月に可決された「2020年環境保護法」[1]で、温室効果ガス削減義務とカーボン市場導入が初めて定められた。温室効果ガスを排出する施設（事業所）の排出削減の責任として、①温室効果ガス排出量測定とデータシステムの構築を行い2年に1回、天然資源環境省（MONRE）に報告すること、②毎年の温室効果ガス排出削減計画と実施、③毎年排出削減実施状況と削減量を報告することが示された（第91条）。また、これら温室効果ガス削減義務のある施設が、ベトナム国内と国際的なカーボン取引市場での取引することによりオフセット可能とすることが記載された。
ファイナンスとSDGsプロジェクトの出会いの場として、ブロックチェーン4.0技術を駆使した市場導入を目指しており、カーボンクレジット取引のほか、グリーン証書、グリーンボンドの取引市場導入も検討されている[2]。4月23日には、「カーボンクレジット市場-ベトナムのグリーン・フィンテックの将来」と題されたフォーラムが開催され、国民経済大学Dang Anh Tuan銀行・財政研究所副所長、Luong Thai Baoファイナンステクノロジープログラム委員長らが、現状のベトナムのカーボンクレジットは第三者である海外の組織任せであり国内独自の取引市場導入の重要性を学生に向けて語った。
「2020年環境保護法」は2022年1月施行予定で、排出計算方法やクレジット取引市場等の具体実施方法等については今後、詳細のルールが検討発表されていく予定だ。

●中国：国家能源局が風力と太陽エネの開発目標を通知

国家能源局は2021年5月11日、2021年の風力発電と太陽光発電の開発・建設に係わる関連事項を各省や自治区等の関係機関に通知した。[3]
習近平国家主席は昨年9月の国連総会で、中国のCO2排出量を2060年までに実質ゼロ（カーボンニュートラル）にすることを公約した。また、今年3月の全国人民代表大会（全人代）で承認された「国民経済・社会発展第14次5ヵ年計画と2035年までの長期目標綱要」では、カーボンニュートラルの中間目標として2030年までのCO2排出のピークアウト達成のためのアクションプランの制定が盛り込まれた。こうした目標を達成するため、2030年までに、一次エネルギー消費に占める非化石エネルギーの割合を25％程度にする方針を打ち出した。目標の達成に向けて、中国は風力発電と太陽エネルギー発電の設備容量の合計を12億kW以上にすることを見込んでいる。
通知では、2021年が「第14次5ヵ年」計画期のスタート年であり、風力発電と太陽光発電が新たな段階に入ったとしたうえで、各地方政府に対して具体的な施策を講じるよう要求している。具体的には、2021年には全国の風力発電と太陽光発電が全体の電力消費量に占める割合を11％程度にするとともに、2025年には一次エネルギー消費に占める非化石エネルギーの割合を20％程度に引き上げるとの目標を提示した。
こうした目標を達成するため、地方政府等が責任を分担することを前提として、具体的な施策を打ち出した。まず、「第14次5ヵ年」計画期の目標に照らし、各地方政府が再生可能エネルギーでつくられた電力を無駄なく消費する責任のウェイトと合理的な利用目標を定めて公表する。
次に、再生可能エネルギーでつくられた電力を送電網に組み入れるための多元的な保障メカニズムを構築するため、各地方政府は水力発電以外の再生可能エネルギーの消費責任を果たすための新規の送電網拡張プロジェクトを完成させる。2021年については、送電網に組み込む最低ラインを9000万kWとする。こうしたプロジェクトの中には、揚水発電所の拡張や熱貯蔵タイプの太陽熱発電、火力発電によるピーク調整、新型エネルギー貯蔵、負荷調整などが含まれる。
家庭用の太陽光発電の建設も着実に推進する。2021年には国の助成予算として5億元が計上されている。なお、家庭の太陽光発電施設でつくられた電力については、電網企業が受け入れることになっている。